本研究は、特別養護老人ホームの初任介護職員と認知症高齢者の関係形成過程を明らかにすることを目的とする研究である。筆者のこれまでの研究結果からユニット型の介護職員は、利用者との関わりにおけるストレスが経験者に比べ、有意に高いが、既存型では経験者との違いは見られなかった。その結果を踏まえ、平成20年度は、初任介護職員と利用者との関係形成における要因を職場のサポートの状況から見た。 結果は、ユニット型、既存型共に情緒的サポートよりも道具的サポートが初任介護職員の遭遇するストレスに対して広範囲に有効に関わっていることが示唆された。このことは、道具的サポートである仕事のやり方やコツ、仕事のアドバイスなどの具体的な指導という形でのサポートが有効であることを示している。また、ユニット型ではストレスに対する先輩のサポート効果は見られなかったが、既存型における先輩の道具的サポートは職場の人間関係に効果的に作用していることが示された。ユニット型では、経験者に比べて初任介護職員のストレスは高いという結果が示されているが、仕事を教えてくれる指導者としての先輩の存在は、初任介護職員のストレスを緩和するという意義が見出された。既存型のケアシステムとして、先輩は身近であり、常に仕事を共に行うことができるという特性があるが、ユニット型では初任者であっても個室での介護というケアシステムが初任介護職員のストレスに関与している可能性が見出された。この結果は、ユニット型における初任介護職員の教育的関わりを含むサポート体制を考える上で重要な点を示唆したといえる。
|