本研究は、初任介護職員の認知症ケアにおける困難な体験を明らかにし、職場適応を促進するための手がかりを得ることを目的とした。初任介護職員の認知症ケアの困難体験を基礎的な資料を得るために、対象者を無作為に抽出した全国の特別養護老人ホームの初任介護職員とし、介護福祉士の養成施設を履修し、資格を取得した人という条件を設定した。有効回答数は137件、回答者の年齢は、21歳から23歳に集中しており平均経験年数は、従来型施設1年3ヶ月(SD3.2)ユニット型施設1年4ヶ月(SD3.4)であった。 調査内容は「認知症高齢者のケアで体験した困難」とし、自由記述にて回答を求めた結果、195件の記録単位が抽出され、分析は質的因子探索型研究とし、Klaus Krippendorffの内容分析を援用した。 初任介護職員が認知症ケアで体験した困難は、【認知症高齢者が示す行為や言動の意味とその背景を理解する方法が身についていないことによる困難】【認知症高齢者ケアのイメージと現実のケアとのギャップによる困難】【業務に円滑に対応できない焦りがもたらす困難】の3つに大別された。その結果から利用者とのかかわりにおける自己評価とセルフコントロールの方法を習得する機会を提供すること、同僚と体験を共有し、助言を得る機会を提供することの有用性が示唆された。今後、初任介護職員が認知症ケアにおいて、自己の直面している課題を客観的に把握できるような測定用具の開発が求められる。
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