研究概要 |
本研究は,過疎化・高齢化が進展する地域におけるICT (information & communications technology:情報通信技術)を活用した高齢者見守りシステムの効果を,実証的に検証することを目的とするものである。高齢者見守りシステムの効果については,3システム(緊急通報システム,受動型の安否見守りシステム,及び能動型の安否見守りシステム)の比較検証を行うところに,本研究の特徴がある。 本年度は,高齢者がLモード電話機により能動的に安否を発信するシステムを平成15年から利用している岩手県川井村において, Lモードサービスが平成21年度末に停止する予定となったことに伴い,10ケースに対し新たな端末の案3つを実験的に提示しながら,質的で詳細なヒアリング調査を実施した。その結果,緊急時に至る前の予防的措置,高齢者の自己確認の習慣化と援助資源を調整する力の育成,地域の協力者との関係形成の3点において効果があることが明らかになった。また,川井村における40ケースの5年間の安否発信の記録をデータ化しその推移を分析した。川井村においては平成22年度から新たな能動型の見守りシステムに移行するため,平成22年度においてはシステムによる効果差などさらに詳細な効果分析を行う予定である。 また,緊急通報システムと能動型の安否見守りシステムについては,北東北3県における地域ごとのシステム利用状況について調査を行った。この調査結果をもとに平成22年度は,北東北3県で構築を進めている能動型の安否見守りシステムについて利用者評価を把握するとともに,緊急通報システムと受動型の安否見守りシステムとの効果を比較する予定である。その際には,地域や運用による差異についても把握する。このように,本研究は, ICTの先進性に着目するのではなく,サポートネットワークの形成に配慮した社会システム構築の観点からICTを分析するところに,意義と独創性がある。
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