研究概要 |
ソーシャルワーカーという専門職は、専門職としてのキャリア形成の過程で、ジレンマやストレスに晒される頻度が高い。専門職として、またキャリア発展におけるジレンマやストレスは男女共通であるが、出産・育児・介護など家庭生活に関するものは女性特有のものもある。本調査研究は多様な分野で活躍するソーシャルワーカーのライフコースにおけるジレンマとストレスに、個人のライフヒストリーとアンケート調査から迫る所に独創性がある。 またジレンマへの対処方法や解決方法が実在モデルのライフヒストリーとして示され、同業者やソーシャルワーカーを目指す若者に、バーンナウトをふせぐための自己管理やストレス解決への参考となる。同時にジレンマやストレスを自分史として語ることにより、自分のエンパワーメントになり、スーパーヴアイザーや研修指導者の教育システムにも応用可能である。個人のライフヒストリーという質的な実証的研究であり、世代ごとに一定数のアンケート調査を行うことにより、世代や分野に共通なジレンマやストレス、その解決方法や対処法を数量的データーで裏付けでき、ライフコースにそったキャリア支援システムに利用可能である。 昨年度に続き本年度も職能団体の日本社会福祉士会の協力を得て、5か所での研修会に協力を得て、ヒアリングや調査を実施したい.アンケート調査のサンプルプルの有効数を確保するためである。回収したサンプルの内、半数は回答内容や経歴かち有効サンプルとして分析に使えないため、本年もアンケート調査を実施し、追加で集めたい。全体で80サンプルにして分析を世代ごとに行いたい。また、ヒアリングの調査研究では、ライフヒストリー事例を5例追加した。 最終年度のため、ライフヒストリーとキャリアデザインを関連づけた、若い福祉人材の参考書として出版を計画している、特にバーンナウト傾向とそれへの対応、個人的なストレス解消法などの参考にもなる。バーンナウトは必ずしも若いから陥るのではなく、キャリアの初期、または新たなポストや部署での2,3年のうちに見舞われることが多いことが事例から分析できた。ソーシャルワーカーの仕事の魅力に取りつかれた人は、一度バーンナウトしても中断後復職し、何故か転職しても福祉分野を選んでいる。そのような人にソーシャルワークのキャリアを積んでもらうため、この調査研究によって仕事の奥深さと困難さを提示できた。 本年度はライフヒストリー、アンケートの集めたサンプルに総括的な分析まとめを行う。若い社会福祉士や養成施設で勉強中の学生のためのキャリア教育本を出版した。同時にアンケート調査結果報告書により、3年間の調査研究の詳細な成果を260頁以上の報告書としてまとめることができた。
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