研究概要 |
本研究は,戦後の社会福祉の制度的枠組みの改変が相次ぐ脈絡のなかで,ソーシャルワークを,パラダイムの概念に基づいて批判的に分析し,再検討するものである.ソーシャルワークの目的とより一致する社会的パラダイムを模索し,それに向けて転換しうるソーシャルワーク実践と理論を検討する.パラダイムの概念は,自明視される既存の社会的秩序を,異なるものに変えうる認識的視座を与える.この認識的視座から,現代社会のイデオロギーと,ソーシャルワーク専門職が依拠すべき国家や社会のイデオロギーを尋ね,イデオロギー分析を組み込むソーシャルワーク理論の再編をめざした. 平成20年度の研究実施計画では,次に掲げる項目について,先行研究を文献調査し,検討した.(1)ソーシャルワーク教育で伝えられる知識の批判的見解について,(2)国家とイデオロギー,ソーシャルワークとイデオロギーの関係について,(3)イデオロギー分析を含むソーシャルワーク理論の再編について,(4)異なるパラダイム(新保守主義,自由主義,社会民主主義,マルクス主義)のイデオロギーから発する,価値観,社会的・経済的・政治的信念,社会問題の捉え方,福祉国家のあるべき理想の姿,そこで行われるソーシャルワークの性質と形態について,(5)ソーシャルワーク専門職が支持する信念(伝統的なものから,進歩的なものまでの範囲)について,以上の項目について先行研究を文献調査し,検討結果を論文にまとめ,学会誌等に投稿し,査読審査を経て,研究成果を発表し,多くの意見や指摘を受ける機会を得た.
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