グローバル化社会の傍らで、人々の抱える社会的不安や社会的諸問題には、経済低迷下で生ずる失業や不安定就労、それによる賃金収入の減少や喪失、さらに住居の喪失、地域社会や家族の崩壊、児童・高齢者・障害者など社会的弱者への虐待やネグレクトの増加等がある。 本研究は、資本主義社会の構造的な歪みの犠牲となっている人々の社会的諸問題について、ソーシャルワークはどうアプローチするのか、また、すべきかを検討した。それは、ソーシャルワークの目的を改めて問うことを意味し、オルタナティヴなソーシャルワークの理論的枠組みの探究が課題となった。 既存の社会的アレンジメントの下で噴出する社会的諸問題に対して、ソーシャルワークがその減少に貢献することができるためには、ソーシャルワークの知識に、既存の社会的アレンジメントを客観的に対象化し分析するための概念的装置を必要とする。その概念としてパラダイムを活用した。パラダイムを同定するのはイデオロギーである。イデオロギーのもつ価値や信念や目的がパラダイムの特色や基礎をつくる。そしてソーシャルワークの特性や形態や方向性を決める。ソーシャルワークは、準拠するパラダイムやイデオロギーの違いによって、ソーシャルワークの目的や方法、問題の定義や実践の介入を異にしている。パラダイム・イデオロギー分析の、ソーシャルワークにおける実践的意義や教育的な意義について調べた。 今後の課題としては、パラダイム・イデオロギーの概念を、ポスト・モダニズムやフェミニズムからの知識によって補完していくことを考える。
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