平成22年度は、英国でのヒアリング調査を中心に研究を行った。以下3点に要約する。 (1)チャイルドウェルビーイングの国際比較研究の動向については、韓国などアジアも射程に入れたOECD等の研究も進んでいること、特に主観的なウェルビーイングの側面への関心が高まっていることが確認された。また、英国連立政権の社会政策の方向性について、当面財政危機による社会保障制度の削減が続く予定であること、児童手当の額は当分凍結されることになったことなどの見通しが明らかになった。(2)今回の調査開始時点では想定外の結果であるが、チャイルドウェルビーイング国際比較研究のテーマとして、日本が新たに導入した普遍主義的給付である「子ども手当亅への関心が高まっていることが確認された。日本の子ども手当については、子どもの貧困対策などへの肯定的な評価も含めウェルビーイングの視点からの評価は高かった。また、普遍主義的側面が不人気であることについて、英国でも世論が圧倒的に支持しているこということではなく、一旦制度を導入することに大きな意味があると考えられるという評価を受けた。(3)経済的なウェルビーイングの分析の視点として、社会的な給付の世帯内・家計コントロールおよび子どもに届くかどうかについての分析が重要となっていることが再認識された。英国ではこの点が注目されており、今後のチャイルドウェルビーイングにとって重要な点である。税制度改革との関連でいえば、日本においては家計全体をとらえた再分配の視点が希薄である。日本の経済的支援のパッケージの改善度合いについて、手当による直接的な効果と、教育費の負担軽減による効果との区分、構造的な把握についての重要性について再認識した。上記の結果は、今後のチャイルドウェルビーイングのインデックスの構成を検討する上で重要な要素であり、最終成果のとりまとめに有益となった。
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