本研究は、介護事故リスクマネジメント活動に関する効果検証の方法について、実証的研究を行うものである。介護施設においては、事故防止のための活動が行われているが、必ずしもとられた対策についての効果検証が十分ではなく、発生した事故の対応に追われている施設も少なくない。こうした介護施設の現状から、効果検証についての標準的な方法論の確立が課題といえる。こうした問題意識から、幾つかの介護施設のリスクマネージャーの協力・参加をえて、定期的に研究会をもち、リスクマネジメント活動についての効果検証の方法を協議してきた。 本年度は、大学院において、院生とともにアメリカの医療・介護のリスクマネジメントに関する教科書を輪読し、リスクマネジメント活動についての理解を深めるとともに、介護事故についての裁判例の検討を行った。 介護施設のリスクマネージャーとの研究会では、リスクマネージャーに対し特定の介護事故についての発生頻度についての報告を求め、有効な事故防止の実践方法(best practice)について協議した。しかし、発生頻度の低い施設における取り組みが必ずしも有効な事故防止の実践方法(best practice)とはいえないこと。有効な事故防止の実践方法(best practice)も、施設の構造や職員の経験年数や熟練度などの違いから効果が確認できないなど、効果検証が難しいことなどが明らかになった。グループ全体の発生頻度についてベンチマークを設定し、事故防止の効果検証を行う方法の有効性については、懐疑的な意見が多かった。
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