本研究は、介護事故リスクマネジメント活動に関する効果検証方法について、リスクマネジメントに関わる施設職負と実証的研究を行うものである。本研究では、協力施設の施設職員と効果検証のためのシートを開発し、協力施設において効果検証シートを活用し、昨年からの半年ごとの効果証を行ってきた。さらには、効果検証シートの改訂・見直しに取り組んできた。そして、施設における効果検証シートの活用方法や効果検証のシート活用の意義について協議してきた。 施設職員との研究会では、類別された当該事故の重大性や残存リスクの評価については、評価者のリスク・アセスメントにかなりのバラつきがあり、施設ごとの比較指標とならないことが明らかになった。今後の運用上の課題とすれば、こうした効果検証シートの活用においては、評価者の研修をつうじて、類別された当該事故の重大性や残存リスクに対する評価方法について、標準化することが大切である。こうした標準化が可能であれば、研究目的として掲げていた類別された事故パターンごとに、ベンチマークを設定することも可能となる。 これに対して、施設内における効果検証の方法として、開発した効果検証シートを活用し、残存リスクなど数値化されたベンチマークを設定することには、再発防止の実効確保という面からも意義があることが明らかになった。また、施設長や理事長に対し、効果検証報告書を作成し報告することも、事故の予防について、経営者からの具体的な関わり(コミットメント)を引き出すことになる。経営者にとっても、事故リスク全体をみて、優先順位をつけながら、事故防止の対策について意見を述べる機会となる。こうした経営者の関わりが、事故防止に取り組む介護職員のやるきにつながるものと考える。実際に効果検証を経営マネジメントの仕組みのなかに取り組むことにより、事故防止の効果が上がっていることが確認できた。
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