平成20年度に障害者の父親に対して、次のような調査項目を含んだアンケート用紙を作成した。(1)障害児であると診断を受けたときの気持ち、(2)家庭内での育児の参加、(3)家事の手伝い、(4)学校行事への参加、(5)職場での相談、(6)障害児の将来への思い、(7)父親亡き後の障害者と母親の生活について、(8)行政に期待すること、である。そして、これらのアンケート用紙を山口県、広島県、兵庫県の知的障害者育成会の団体に配布し、約200名から回答を得た。 その結果、現段階において次の様な状況が見られた。父親の7割は50歳代以上であり、職業はサラリーマンが最も多く、次いで年金生活者であり、妻の多くは働いていなかった。子どもの障害は知的障害が最も多く、年齢は7割が19歳から49歳までの成人であった。子どもの障害について知ったとき、9割が「ショック」であると回答し、4割が「落ち着いて仕事ができなかった」と回答していた。 6割は職場の上司(同僚)に話をし、50歳以下の父親達にそのような傾向が見られた。8割は、育児について妻と「よく話をし」、そのような傾向は中度の障害者の父親に見られた。家事や学校行事には半数以上が参加していた。障害者への将来や父親亡き後の障害者の世話で心配は、障害者の「働く場所の確保」であった。現時点において、父親の大部分は、妻とコミュニケーションを持ち、育児や家事にも参加していた。これは、多くの父親達の年齢が50歳以上であり、過去、障害の子どもにかかわる問題を克服してきたことが、前向きな回答結果に影響を及ぼしていると考えられる。 日本とドイツの障害者の父親に対する個別インタビューでは、共に地域の障害者に対する偏見に悩んでいることが示された。
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