理論的研究については、経験レベルでの臨床実践効果の検証に耐えうる生成的ネットワーク論を以下のように体系化した。まず社会復帰を、対人間のコミュニケーション・ネットワークの構造とその過程として分析する視座を提示した。このコミュニケーション過程を、主体の行為選択と意味構成を基本的な要素とし、それらのパターン化した構成体である出来事定義および自他の関係性定義の重層構造からなるネットワーク過程として定義した。その上で、社会復帰を促進するネットワーク過程の変容を、ミクロレベルでは、この重層構造とその力学の差異化として、マクロレベルではこの差異化が引き金を引くトランズアクション過程全体として、ミクロからマクロレベルまでを、統合して説明する理論枠を構成した。マクロなネットワークの変容の力となるミクロレベルでの変容技法の選択については、SFBPや循環的質問法を中心に、理論的考察を深めた。 実践的研究については、研究協力の同意が得られ、かつ慢性疼痛のため社会生活に困難が生じている患者を対象にして、上記の理論的研究で体系化された生成的ネットワーク療法を実施している。なおこの実践研究は、広島大学の倫理審査委員会の承認を得た上で実施されている。 効果測定法については、萌芽研究で体系化した効果測定法を、上記の理論的研究で整備した理論枠と連動させて、その実施手順を整備した。その上で、上記の実践的研究によって得られたデータの測定を実施している。
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