研究課題
1. 実践研究の成果:本年度の実践研究は、ネットワーク療法を用いた事例研究法で遂行された。研究対象者は、本研究への協力に同意された、社会復帰が困難になっている外来通院中の慢性痔痛の患者である。彼らに対し、生成的ネットワーク論に基づく、ネットワーク療法を、以下の手順で試みた。(1)訴えをトランズアクション過程のシークエンスの要素(意味構成および行為選択)として記述させ、(2)要素間または要素群のネットワークの生成力学を評定し、(3)これまでの研究で類型化された技法を用いて、その力学の変容を試み、(4)要素群のネットワークの変容過程の効果測定法を実施した。その上で、本研究のネットワーク療法の洗練化を図った。2. 実践理論の研究成果:実践研究の逐語データの分析から、新しいシークエンスの要素群間のネットワーク生成に効果的な、問題場面のシークエンスの要素間の矛盾増幅ネットワークの評定法と変容技法について理論的吟味を行った。そして、評定法および変容技法を軸に、(1)Circular questions model、(2)Solution focused skills model、(3)Positive reframing model 1、(4)Positive reframing model 2、(5)Paradoxical modelという5つのモデルとしての体系化を試みた。3. 効果測定の実施成果:昨年度までにネットワーク療法を試みた事例の逐語記録を用い、本研究において体系化された効果測定法を用いて、変容過程の分析研究を行い、その測定力を検証した。4. 研究成果の公開:上記の「2.」実践理論の研究成果は、The Journal of AIDS Researchに投稿し、公開された。また、第18回国際エイズ会議(オーストリア、ウィーン)において、実践研究の成果の公開として、(3)Positive reframing model 1のモデルと効果測定法を用いて事例分析研究を発表した。
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The Journal of AIDS Research
巻: Vol.12, No.2 ページ: 119-123