研究概要 |
今年度の研究成果は、以下のとおりである。(1)社会構成主義的評定法の定式化を試み、以下のように問題が生起する場である「社会」の評定理論を体系化した。まず、「社会」を生成的構成体とみなし、重層的なコミュニケーション・ネットワークの構造と過程を軸に定義を試みた。その上で、変容の具体的対象を定めるべく、その最もミクロなレベルである2者間のコミュニケーション過程における意味構成と行為選択の力学の理論化を図った。さらにこのミクロレベルの変容がマクロな社会レベルへと波及する力学を説明する理論をも体系化し、これらを評定の理論枠とした。(2)次に社会構成主義的変容方法の体系化が考察された。コミュニケーション過程の産物であるクライアントの訴えの変容過程は、クライアントの訴えを具体的なコミュニケーション過程の意味構成と行為選択として記述しなおす「記述過程」と、そこで記述された要素群をリフレクションする「リフレクション過程」に分けられ、それぞれの過程で使用される技法群を体系化した。「記述過程」では、トム(Tomm,K.)の循環的質問法が中心的に用いられ、「リフレクション過程」では、クライアントの記述に応じ、循環的質問法を中心的技法としつつも、解決志向の諸技法、および逆説処方を統合的に用いる手順を体系化した。さらにこれらミクロ過程の変容をマクロなレベルの変容にまで拡大する技法について考察が深められた。(3)そして、具体的な事例での変容過程の効果測定法の実施を通して、変容過程で用いられる技法とそれに結びついて収集される測定データ(シークエンスの要素群)のレベルについて吟味を加え、効果測定法の定式化が図られた。(4)研究成果は、第21回アジア太平洋ソーシャルワーク会議での発表および、Reconstructing Meaningful Life Worlds : A New Approach to Social Work Practice(iUniverse)の出版による国外への発信、さらに家族心理学研究への論文投稿により国内への発信という形で公開された。
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