ケアや介入への活用を目的として読み能力を評価でき、かつ、認知症のある人に抵抗なく受け容れられるような、簡便で実用的な方法を探ることを目的に、20年度に予備的研究を行った。21年度は、この結果に考察を加え、第1段階としての研究1および研究2としてまとめた。すなわち、研究1において、漢字の読みが困難でも、検査者が読み上げることで、語の音韻形式にアクセスできれげ理解できる場合もあったことから、ルビの大きさについて検討が必要であることがわかった。また、横書きの項目の音読が容易であったことから、縦書き・横書きの違いよりも、内容の馴染みやすさの影響が大きいと推察された。また、仮名を通常表記に用いない語を仮名で標記した場合に理解の困難を招く可能性があること、などが明らかになった。そこで、刺激の様式や順序を整理して研究2を行った結果、対象者の読み能力のレベルやその人に適した文字の大きさを明らかにすることができた。また、ルビを大きくすることは有用であること、音読の可否のみにとらわれずに対象者の反応の観察から理解度を判断することが重要であることがわかった。 これを受けて連携研究者らの助言を得ながら、本実験の実験計画を練った。すなわち視・聴覚のスクリーニング検査や注視ができるかの確認を日常的な場面設定で行うこと、検査者による「読み上げ」を一条件として加えること、などを含め、具体的な手順について検討した。刺激の内容については、本実験の前に、語の使用頻度に加え、高齢者にとっての親しみやすさや読みやすさを調査するための追加実験を健常者に対して行うこととし、素材の準備を進めた。
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