研究概要 |
認知症者「読み」能力評価法・試案2の作成に向けて,健常者を対象とした検討を行った。 若年群と高齢群において,文字配列(縦書き/横書きの別)・書体・フォントサイズによって読みやすさに違いがあるのかを客観的評価と主観的評価を用いて検討した。その結果,客観的評価(読み速度)においては,視力および処理速度の差,取り組み方の差により,高齢群に比べ若年群は読み速度が速いと示唆されたものの,文字配列・書体・フォントサイズによって読み速度は変化しなかった。一方主観的評価においては,若年群・高齢群ともに書体についてはゴシック体よりも明朝体が読みやすいと評定され,文字の太さの影響を受けると考えられた。またフォントサイズは,12ptのような小さい文字よりも16pt,20ptといった大きい文字が好まれた。文字配列については年齢に関係なく,日常生活での慣れが影響すると示唆された。以上から,評価法で提示する文字刺激は,明朝体,横書きを用いることとした。 また,健常高齢者において,刺激内容について検討を行った。すなわち評価に用いる文字刺激(単語・短文)として,検査者からの中立的な促しによって高齢者が容易に応答できる刺激,さらに「はい・いいえ」にとどまらない反応が出やすい刺激を明らかにすることを目的とした。60歳以上の健常者,女性12名.男性7名(62歳~80歳)を対象に,15の短文刺激,40の単語刺激を提示し,コメントを求め,親しみやすさ,応答のしやすさについて評価してもらった。親しみやすさと応答のしやすさについての主観的な評価では,いずれの刺激も,親しみやすく,応答しやすいという評価が得られたが,コメントの内容から,「はい・いいえ」にとどまらない応答が得やすい刺激,話題が広がりやすい刺激について示唆を得ることができた。この結果をもとに認知症者「読み」能力評価法・試案2に使用する短文・単語を選定した。
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