本研究の目的は、子どもと養育者を対象とする調査から放課後の生活実態や精神的健康状態等について把握し生活・発達課題上必要とされる放課後支援体制(居場所)の検討を行い、その結果にもとついて『放課後子どもプラン』における子ども・家庭育成支援プログラムを開発するとともに、プログラムの効果的な実施に必要とされる条件を整理・提言することにあった。平成21年度は、本調査実施に向け(1)これまで実施してきた小・中学生の放課後の生活実態に関する質問紙調査(平成18年度実施)、小・中・高校生を対象とした精神的健康に関する調査(平成19年度実施)を分析し検討すると同時に、(2)現在の『放課後子どもプラン』実施状況の前調査を行なった。(1)の結果、ストレス対処としていずれの学年も「友達と遊ぶ」方法をとる子どもの割合が最も多く、また、「友達と遊ぶ」方法をとる子どもの方が抑うつ度が低いことが認められ、子ども同士の日常的な交流のきっかけとなるような機会の提供の必要性が考えられた。(2)では、調査対象地域である広島県三原市が実施する『放課後子ども教室』を視察し、教室運営スタッフ(コーディネーター、ボランティア等)に対し聞き取りを行なった。同市では、殆どの『放課後子ども教室』が学習支援ではなく放課後の居場所の提供として運営している。実施内容は、各小学校区の面積や年齢別人口規模等によって多様であった。聞き取り調査では、スタッフの確保や子どもへのかかわり方、活動の企画・実施などが共通した課題として出された。また、教室運営スタッフが抱く放課後の生活のとらえ方や子ども観、特にコーディネーターの力量(学校・地域(ボランティア資源)・保護者間の調整、ボランティアと子どもとの交流や子ども同士の交流の促進、ボランティア育成など)も、教室運営を左右することが推察された。地域の多様性に配慮すると同時に、『放課後子ども教室』のミニマム・スタンダードが必要である。
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