平成20年度は本研究の一年目になるが、当初予定していた計画に従って研究活動を進めてきた。文献資料の収集と整理は本年の研究活動における重要な一環である。これまで蓄積してきた資料を「日本と中国に分けて、さらに年金、医療、失業、社会福祉に分類して整理した。日本の資料に関しては主に1950年代半ばから1980年代半ばまでのものであるが、中国に関しては1990年代初頭から2007年までのものである。日本の場合は、高度経済成長によって急増した財政収入は社会保障への財政支出を拡大させた。比較研究によって、経済成長、財政収入と社会保障財政とのこのような関係は1990年代半ば以降の中国にも当てはまる。これは本年度の研究活動から得られた成果の1つである。 現地調査とヒアリングが本年度の研究活動におけるもう1つの重要な仕事である。本年度においては平成20年8月、10月、平成21年3月、授業のない期間中に3回中国に行き、計8都市において現地調査とヒアリングを行なった。当初予定していた蘇州工業園区の現地調査は担当者の都合により本年度で実施できなかったが、東北地域に調査することができた。例えば、遼寧省大連市市と吉林省長春市でのヒアリングから、東北地域で展開された社会保障改革の内容と成果、現段階での問題点を把握することができた。また、中国において社会保険(五つの保険と1つの徴収金)の徴収と給付の状況を知ることができた。年金改革と関連して高齢者福祉についても現地調査することができた。北京市、天津市、大連市、扶順市・成都市・上海市の養老院などの高齢者施設や高齢者の自宅において、中国の介護サービスの現場を視察し、アンケート調査を行った。その成果として、一部の高齢者に対して年金給付身の回りの生活保障と連動していることが分かった。
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