本研究は、障害福祉分野においてサービスの受け手でありかつ送り手である人々(以下、プロシューマー)が、受け手・送り手の間を行き来するところの構造を明らかにし、彼らをとりまく状況との関連性について検討することを目的としている。主に欧米による先行研究より、プロシューマーには「セルフヘルプ」「権利擁護」「就労」の三つの系譜が流れていることが判明し、また「リカバリー」の普及によりプロシューマーが広がっていったことが明らかとなった。特に北米においては「認定ピアスペシャリスト」としてより専門性のあるケアチームの一員として社会的地位を確立していることなども明らかとなった。 調査については全国11団体に所属するプロシューマー29名に対し3~6ヵ月ごとの聞き取り調査を述べ90回実施した。さらに調査対象となったプロシューマーの雇用主9名および支援者(同僚)6名に対してもそれぞれ14回および6回の聞き取り調査を実施し、プロシューマーの聞き取り調査による語りとの関連性や比較を行った。また北米(ウィスコンシン州、ワシントン州、コロラド州、カリフォルニア州、ジョージア州)のプロシューマー23名に26回、雇用主3名3回、支援者(同僚)3名3回の聞き取り調査を実施した。結果および分析にはライフストーリー分析およびポジション理論を援用し、ツールとしてMAXQDAを用いた。 暫定的結果として、支援の受け手と送り手の二つの立場(ポジション)を行き来するプロセスのなかのプロシューマーの葛藤および変化の有無は社会的状況(スーパービジョンの有無、採用方法、雇用主や機関全体の考え方など)に影響を受けていることがうかがえた。北米調査からはプロシューマーがエンパワメントする社会的状況の条件について示唆する結果を得た。
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