今年度、急遽、国による「スクールソーシャルワーカー活用事業」が実施されることとなり、当初計画していた日本の学校ソーシャルワークの歴史に関わる調査研究は、次年度に集中して実施することとし、今年度は全国各地での活用事業の実施状況の調査を通して、京都市や高知県での歴史的実践の意義を検討することとした。 SSW活用事業は、全国300以上の自治体で実施されているが、SSWの活用状況には大きな差がある。北海道、東北、関東、関西、九州地区の活用事業の実施状況を調査した結果、関西、九州地区において実践や組織化が進んでおり、関東以北で遅れていることが明らかとなった。こうした結果となった背景として考えられることは、事業実施教育委員会への事業実施に向けたバックアップ体制の有無である。教育委員会が当該地域の社会福祉士会や精神保健福祉士会をはじめ、スクールソーシャルワーク関連団体と連携している地域は、ワーカーの供給面だけでなく、研修体制の整備やワーカーの組織化の面で、進んだ取り組みをしていた。 また、今年度の調査では、SSW活用事業のモデル事業から補助事業への移行を受けた事業実施教育委員会の動向から、この種の事業が継続して実施されていくためには、教育委員会の組織の問題や指導主事の事業への理解や意識の問題が大きいことが分かった。こうした組織や意識の問題は、スクールソーシャルワークの歴史的実践である京都市教育委員会「生徒福祉課」や高知県教育委員会「福祉教員」の変遷と大きく関わっており、次年度の研究につながる多くの知見が得られた。
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