研究概要 |
本年度は,養育者となる児童養護施設職員(以下,レジデンシャルワーカー=RWと表す)と被虐待児との関係形成プロセスを踏まえた組織全体を包括した心理コンサルテーションシステムを開発することを目的に,以下の研究を行った。 (1)職員支援という観点からの心理コンサルテーション機能の明確化,(2)児童養護施設職員の職務上の「支え」と「困難」に関する分析,(3)心的外傷からの回復と愛着関係の再形成という視点からの施設における被虐待児への心理支援プロセスの生成 (1)について,本研究のために作成した『心理コンサルテーション機能測定尺度』とバーンアウト尺度との比較検討を行った結果,心理コンサルテーションにおいて「組織との関係調整」の視点を持つことが職員のバーンアウトリスクを減ずるのに有効であることが明らかとなった。また,児童養護施設職員には,介護職などと同様に,バーンアウト尺度における「個人的達成感」因子が優位に低い結果が得られた。(2)については,自由記述欄の質的分析を行った結果,支えとしては「子どもとの肯定的な交流」,困難としては「職員・組織関係の不調」が中心的な要因であることが示唆された。(3)について,被虐待児との養育関係形成プロセスについて,面接調査のトランスクリプトをグラウンデットセオリーアプローチにより現在分析中である。心理コンサルテーションの基本的機能およびコンサルティの特性を明らかにすることは,本研究だけでなく,広く心理コンサルテーション研究および被虐待児への支援と支援者のストレス研究にも寄与する内容である。今年度得られた結果を踏まえることにより,具体的な児童養護施設における心理コンサルテーション介入の方法の検討が可能となる。
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