研究課題/領域番号 |
20530534
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
菊池 義昭 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (50258927)
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キーワード | 石井十次 / 児童福祉史 / 社会福祉史 / 養護実践史 |
研究概要 |
平成23年度の研究実績をまとめると、次のようになる。 1.岡山孤児院の里預制の全体像とその歴史的意義の解明 5月6日の社会事業史学会では、「岡山孤児院の里預制と地区世話役の活動と役割-御津郡馬屋下村の事例を中心に-」というテーマで、10月8日の日本社会福祉学会では、「岡山孤児院の里預制と地区世話役の登場-赤磐郡可真村の事例を中心に-」というテーマで報告し、同院の里預制の中における地区世話役の存在を明確化した。 2.「茶臼原農村」づくりの展開とその全体像の解明 8月25日から9月2日に、石井記念友愛社の石井十次資料館で、新たに調査が必要になった松本圭一と農場学校関係の資料調査を実施し、「岡山孤児院の「茶臼原農村」づくりにおける物的環境条件の整備過程-1905年から1917年頃までの茶臼原孤児院の動きを中心に-」(『石井十次資料館研究紀要』第12号、2011年8月)、と「岡山孤児院の「茶臼原農村」づくりと農場学校開校の前提条件」(『ライフデザイン学研究』第7号、2012年3月)の2つの論文にまとめた。 3.出身者の日誌の解読とその内容の分析 引き続き農場学校の卒業生で「茶臼原農村」づくりに参加した殖民の1924年度日誌を翻刻し、「ある農場学校卒業生の日誌-大正十三年度日誌-」(『東北介護福祉研究』第14号、2011年12月)としてまとめ、この時期の殖民の日々の生活と農業の内容に関する基礎資料をまとめた。 4.写真資料の整理とその内容の解明 石井十次資料館所蔵の1,500枚ほどの写真資料の目録とデータベース化した写真の照合と欠落を確認し、欠落部分を補充する最終チェックを実施した。 5.音楽幻燈(活動写真)隊による慈善事業の民衆への啓蒙の実態解明 6月17日、18日に石井記念愛染園の愛染橋保育園で資料整理を実施し、赤野五十二が使用した音楽活動写真隊の資料を発見した。また、1月26日、27日には同保育園で赤野の資料の欠落を補強し、「岡山孤児院の音楽活動写真隊と清国での慈善会の開催実態の分析-赤野五十二準備員が残した1907年から1909年の慈善会関係資料を通して-」(『石井十次資料館研究紀要』別冊I、2012年3月)と、「岡山孤児院の音楽活動写真隊と赤野五十二準備員の国内での慈善会の活動実態」(『東北社会福祉史研究』第30号、2012年3月)の2つの論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的では、(1)岡山孤児院の里預制の全体像とその歴史的意義の解明、(2)茶臼原農村づくりの展開とその全体像、(3)個々の職員の活動内容とその役割の解明、(4)出身者の日誌の解読と内容の分析、(5)写真資料の整理とその内容の解明、(6)賛助員の全国的ネットワークの事態とその社会的役割の解明、(7)音楽幻燈(活動写真)隊による慈善事業の民衆への啓蒙の実態解明、(8)岡山孤児院の実践の当時の慈善事業(社会事業)家や施設への影響の分析、というテーマを分析課題としたが、各課題のうち(3)と(6)を除いては、個別の事例研究として論文等にまとめ、具体化したからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、書籍の抜き刷りや石井十次資料館の資料調査(宮崎県)等により、調査・研究を進める。 また、来年度は、本研究課題の最終年度であるので、11(1)と(2)などを中心にまとめた報告書の作成を行う。 具体的には、これまで蓄積してきた岡山孤児院に関する資料に関する抜きづりを合本にて作成し、報告書とする予定である。
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