親子分離を強いられた子どもに、かつての生活との継続性を保障する上で、親族を中心としたインフォーマルネットワークを意思決定過程において活用することは重要なことである。現在一部の欧米・オセアニア先進諸国では、児童虐待の援助における意思決定過程への子ども・親・親族を含む当事者たちの参画により、親族里親が増加傾向にある。こうした国々における当事者参画のあり方を検討し、日本における文化や現場の実情を踏まえた当事者参画のあり方を明らかにする。その上で、児童虐待の支援過程における当事者参画に基づいた意思決定モデルを提示する。 以上の目的に基づいた本研究は大別して国外・国内研究に分けられる。国外研究では、ファミリーグループ・カンファレンス(以下、FGC)を中心とした当事者参画モデルを採用しているイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、オランダ、スウェーデンにおける意思決定過程への当事者参画のあり方について、文献および訪問を通して得られた知見に基づき国際比較を行う。国内では、神奈川県内の児童相談所で試みられている児童虐待の援助過程における当事者参画の実態を明らかにするととともに、FGCに関する情報を提供することで、FGC導入の意義と日本型実践モデルの構築を行う。
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