本研究は、精神障害者に対する科学的根拠に基づく支援プログラム(EBP)の1つである「Illness Management and Recovery(以下、IMRとも記す)」の実践研究である。 本年度は、より多くの施設・機関に呼びかけて行うアンケート調査を伴う実践研究に先立ち、研究代表者が地域の精神障害者の通所施設においてIMRを5か月にわたり試行的に実践した。プログラムに参加した当事者及びスタッフからのフィードバックを受けて、IMRの最も重要な道具である「配布資料」の内容を日本の文化や社会システムに合わせて修正し、また、当事者が見やすい、フォーマットで提供をするためにレイアウトも改善した。本研究の対象となるプログラムは、米国で開発されたものであり、配布資料に米国在住の人々の生活や社会システムに基づいた説明などが豊富に掲載されている。IMRプログラムは、科学的根拠のあるプログラムとして注目されているが、日本での実践の普及のためには、日本人の文化や社会制度に併せた配布資料へと内容を修正する必要があった。そのため、本研究において、配布資料の内容をそのような方向で修正ことに大きな意義があると思われる。また、次年度以降に実施する実践研究のために、広く都内の精神障害者の通所施設に呼びかけをし、IMRプログラム及び実践研究の内容についての説明会を開催した。さらに、実践研究に参加する施設・機関のスタッフを対象に、IMRプログラム実践をするための研修会を開催し、実践的な研修を提供した。なお、試行的プログラムの実践結果については、精神障害者リハビリテーション学会で発表を行った。参加前と参加後の精神障害者の地域生活ニーズ尺度等を測ったところ、プログラム参加者には、改善の方向へ統計的に有意な変化がみられた。
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