本研究は、精神障害者に対する科学的根拠に基づく支援プログラム(EBP)の1つであるIMR(リカバリーと病気の自己管理)プログラム(以下、IMRプログラムと記す)の実践研究である。 2010年度も、実践研究協力施設6施設のうち4施設において、引き続きIMRプログラムを実施した。概ね週に1回、2時間程度、4~6か月程度のクールで実践を行った。また、実践研究協力施設のスタッフに対しては、グループ・スーパービジョンを提供した。 日本の文化と社会システムに合致したプログラム運用方法と配布資料の開発をするために、プログラム参加者を対象とした質問紙調査と、実践研究協力施設のソーシャルワーカー等を対象としたフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施した。その結果、配布資料については、専門用語の訳語、質問の構成の改善の提案、書き込み式にしたほうが良い部分などについて指摘があった。運営の仕方については、第1テーマへの取り組みに時間がかかること、リカバリー目標を確認しながら、各テーマをすすめることが困難になることがあることなどの指摘があった。 さらに、IMRの予備的な効果検証のため、IMRプログラム参加群20名と対照群24名に、質問紙調査を実施し、得られたデータを分析した。参加群と比べ対照群は入院歴が有意に長いが、それ以外の属性等(年齢、就労状況等)は両群に有意な差はなかった。IMRプログラム実施後、IMRプログラム参加群では地域生活ニーズの減少傾向はみられたものの、地域生活ニーズおよび生活の質ともに有意な変化は認められなかった。有害事象は報告されず、参加者からは前向きなフィードバックが報告されたので、今後のプログラムの実施可能性が示唆された。これまでの調査研究結果をもとに、日本の文化と社会システムに合わせたIMR配布資料を作成し、PDFで無料配布をはじめた。
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