平成20年度では、(1)介護保険の申請・審査・利用の状況、(2)主な介護者、(3)配偶者の介護負担、(4)成人した子どもたちの介護協力の状況、(4)老人福祉施設の入所申請・利用の状況、(5)施設への配偶者の訪問回数、(6)施設への成人した子どもたちや孫の訪問回数、(7)お正月を迎える場所は施設か自宅か、(8)施設への日本人肉親の訪問回数、などの調査項目を中心に、横浜、東京などで生活している<老年期の中国残留孤児>の老後の実態、とくに介護の状況について、実態調査を行った。さらに、中国人養父母の老後生活の実態、とくに収入、支出、支出、入所の状況を引きつづき調査した。調査によってつぎのことが明らかにされた。「中国残留孤児」は、同年代の日本の老人と比較して、経済収入の情況が一段と悪く、支出の節約のため介護の利用をなるべく自己抑制している。しかも、日本語の壁もあるため、入所介護の申請やホームヘルパー利用のとき、同年代の日本人より一層渋っている傾向がみられる。老人ホームに入所してから、同年代の日本人とうまく付き合うことができないのではないかと心配する中国残留孤児が多い。とくに日本の会社で働いた経験のない中国残留孤児はより一層不安を感じている。日本政府は中国残留孤児の老後所得保障に力を入れてきたが、本研究によって、彼ら・彼女らの介護という問題に関しても日本政府による支援策も必要であることを明らかにした。本研究はグローバル化のなかでの日本の介護領域での多様性の様子を理解することに役立つ。
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