純粋に障害をもつ人が地域で経済的にも自立して生活するためには現状の工賃水準を引き上げる必要があると考え本研究をスタートさせた。具体的には、従来のあり方を再編成することで就労機会が増え、就労のあり方次第で労働から得られる報酬を上げていくものに繋げられると考え、ソーシャル・ビジネスの概念を参考にしながら、信州フランス鴨と手刈り@奈川そばの取組によって実証してきた。要するに、障害者就労のステージを高くすることを目指した。1)授産施設や作業所などの社会福祉事業所と中小企業などの民間会社や団体、また大学などの教育機関との三者が連携を図れる構造を作ること(体制づくり)では、受け皿の必要性を整理し、「企業組合」による法人化を図るところまで到達することができた。このことは「保護雇用」から「一般雇用」を示している。2)付加価値の高い物品を販売加工育成できる物に着目すること(商品開発)では、一般市場で戦っていく覚悟決め、真剣に商品開発に務めた。その際連帯経済の概念を参考にコミュニティに根差す意味にこだわった。3)コーディネート力とネットワーキング力を主眼においたソーシャルワーカーの役割を高めること(人材)では、福祉専門職にこだわらず、広く民間企業人にも働きかけることで専門職の役割が明確になった。 以上のような要素を集約して、イタリアの協同組合を主に、最終的には「社会的就労組合」モデルを提唱してきた。社会の反応は様々だが、このモデルが適正か否かの議論が、既存のあり方を再編成するための検討の場となったことは事実である。特に、福祉専門職域にとらわれず一般化したことは一つ成果である。
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