研究概要 |
2つの質的調査研究と先行研究レビュー、プレ質問紙調査を基に2回の質問紙調査を実施した。 1つ目はX県精神保健福祉士協会会員475名を対象に質問紙調査を実施した。プレ調査で明らかになった「アイデンティティ」「対象者観」が「関係性」に影響することに加え、「関係性」が「実践」に影響することを検証した。この結果は協会員全員に報告書で還元した。 2つ目は、前回調査結果を基に項目反応理論を用いて項目特性曲線を描き、質問項目を精緻化させて日本精神保健福祉士協会会員5,595名を対象に実施した。前回調査で課題として残された、伝統的な医学モデル的専門職像を示す要素がそれぞれの概念の中に位置づけられ、状況によって関係性が変化する「柔軟性」という下位概念も抽出できた。 以上のことから4つの概念の尺度化、「関係性」が「実践」に影響することの検証、「対象者観」が「関係性」への予測要因となりうることの検証ができた。さらに坪上の提唱した「循環的関係」のあり様をモデルとして検証することができた。 本研究の意義は、(1)単なる言い伝えではなく「関係性」がソーシャルワークにとって重要であるというエビデンスを提示できたこと、(2)「関係性」、「アイデンティティ」、「対象者観」といった抽象的な概念を尺度によって可視化できたこと、(3)現任者が自らの実践を振り返るための指標を提示できたこと、(4)臨機応変に形成することが要求される「関係性」について、現場における留意点を提示できたことである。
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