今日、ワーキング・プア(働く貧困層)の拡がりが指摘されている。本研究では生活保護の受給に至っていない者を含めた要保護状態に置かれている稼働年齢層の貧困者(世帯)への対策と支援に関する研究に取り組んでいる。特に本研究ではホームレス及び低賃金・不安定雇用者を中心に、稼働年齢層の貧困者(世帯)に対する自立支援のあり方について提起することを研究目的としている。平成20年度は3ヶ年の研究期間における初年度として、研究課題に関係する研究資料・データーの収集を行い、研究内容の蓄積を目標として研究に取り組んだ。今年度は、定期的に京都市を中心に国内各地のホームレス支援施設などを訪問し、研究課題に関するデーター・資料の収集を行った。また、稼動年齢の貧困層に対する政策の歴史的展開を明らかにするため、大原社会問題研究所などでの資料収集に力を入れて取り組んだ。特に、(1)戦後高度経済成長期における生活保護行政の第2次「適正化」政策に関する資料、(2)「労働力流動化」政策に関連する資料、(3)高度経済成長期における低所得者の生活実態に関する研究資料の収集を行った。これらの研究資料をもとに、戦後の稼動年齢層に対する労働・福祉政策、生活保護政策の方向性がどのように定められたのか、今日に至る歴史的展開を明らかにすることに努めた。また韓国・ソウル市を訪問し、韓国におけるホームレスおよび不安定雇用の貧困層の現状、支援に関する調査を実施した。今年度の調査では、(1)ソウル市におけるホームレス支援の中核的施設であるタシソギセンター、(2)アルコール依存症や精神疾患を抱える生活困窮者の支援を行うVISION TRAINING CENTERなどを訪問した。これらの機関・施設において韓国で急速に拡大している非正規雇用と稼動年齢層の貧困層の現状、上記施設入所者の生育暦や家族環境の特徴、増加している若年ホームレスの状況の把握と今後の対策・支援の課題について聞き取りを行った。
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