研究課題
調査対象地域における3年間の死亡者遺族の174名にアンケートを実施した。結果62名から回答があった。限界集落における終末期の現状は在宅死よりも病院での死亡が約5倍と多かった。死亡場所としての病院は生活地域と遠く離れまた、地域の医療福祉サービスは余り利用されていない実態が明らかになった。アンケート回答者で同意を得られた者にインタビュー調査を実施した。厳しい生活条件の下での暮らしの中、人々は地域に深い愛情を持ち、家で終末期を迎えることを希望しながらも現実は無理であるとの思いが強かった。また、地理的な条件もありこれまで続けられてきた土葬の文化を継承していきたいとの願いを持っている者もあったが、高齢化と過疎化、相互扶助の文化が薄れてきており、看取りの文化の継承が困難である現状が明らかになった。看取りの文化が地域の力の衰退に影響しているのではないかと推測される。また、病院での死が多くを占める要因一つに調査地域(県)の医療施設の多さ(病床数)が影響していること。また、これまで培ってきた相互扶助の文化の衰退、地域の著しい高齢化による介護の問題が関係していることが推測される。本年度は日本の限界集落と韓国の過疎地域の現状を比較した。韓国における都市、過疎地域の高齢者への暮らしと終末期への思いについてインタビューを実施した。都市部の高齢者は隣人との交流が少なく、敬老堂や教会などが社会との接点となっていた。最期は病院で死にたいと考えている者が多かった。一方、過疎地で暮らす高齢者は日々農作業を行いながら隣人同士が助け合いながら暮らしていた。家で死にたいが離れて暮らす子どもに迷惑をかけたくないと考えていた。韓国では、2008年度より介護保険が開始されたが過疎地域では、医療福祉サービスがほとんどなく在宅での死亡は困難な状況である実態が推測された。なお、在宅死については、韓国の看取りの文化との関係も検証していく必要がある。
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