沖縄県における地域介護資源について、介護保険制度内外の現状の調査を行った。沖縄県においては、介護保険制度開始当初、高齢者1人あたりの給付費が全国で最も高い水準にあった。施設給付費の高さがその主な要因であったが、近年は、居宅サービスが給付費全体を押し上げる傾向へと変化している。2006年には、制度の大幅改正に伴い、新たに地域密着型サービスが創設され、中でも小規模多機能型居宅介護は、在宅生活を支える地域介護資源としてそのケア実践に期待が集まっている。県内には、介護保険制度外の宅老所や高齢者住宅と外部のケアサービスを組み合わせた地域介護資源が広がりつつある実態を、全国的なデータとの比較により把握し、その特徴を析出し、明らかにした。 「地域密着型サービス」については、市町村によってその指定状況にかなりのバラツキがあるが、指定権限をもつ保険者である市町村の制度への認識、取り組み姿勢に大きく左右されていると見られる。そこで、自治体として石垣市を取り上げ、認知症高齢者共同生活介護(グループホーム)および小規模多機能居宅介護に焦点をあて、聞き取り調査などを通じて、日常のケア実態から高齢者本人や家族の生活を支えるために小規模ケアが発揮している機能を検討した。ソーシャルワークの「環境の中の個人」(PIE)の概念を分析枠組みとし、その機能について、1)本人の力、2)家族の介護力を高め、3)地域とのつながりをつくる取り組みに、貴重な実践知を見出した。行政の課題としては、1)人材の確保、2)研修機会の創出とネットワーク、3)日常生活圏域の設定などが見出された。
|