中期にあたる3年目の当該年度は、児童福祉法の成立過程を措置制度に焦点を据えて整理した前半期の作業と、さらに児童福祉法の措置制度の運用を、児童福祉施設のうち、居住型施設である養護施設(今日の児童養護施設)について検討したこれまでの作業をふまえ、通所型施設である保育所において以下の点から検証した。 1. 地方自治体資料等から、保育所の入所措置に関する運用と保育所内での保育実践の実際について整理した 2. 児童福祉法に限らず、関連する児童関係の法制度の成立に関する関係者の論文や発言記録、会議録、報道記事等から成立期の保育所制度に関する情報を収集し整理した 3. 教育基本法・学校教育法成立前後の関連資料から、教育関係者による保育所に関する論文、発言、会議録を収集し、関連領域からの児童福祉施設としての保育所理解を整理した。 その結果、とくに保育所の入所措置の領域で、児童福祉法に新設された措置制度が地方行政の現場になじみにくかった困難な状況が明らかになった。この事実をどう理解するか、さらなる調査をふまえた分析が必要である。また、理念的には、児童福祉法の措置制度を支える児童福祉の公的責任論と教育基本法によって確立された教育機会の均等論とは切り離され難いことに気付かされた。児童保護・児童福祉と教育の領域の事柄が絡み合いながら、戦前期から戦後期にむけて、継承・変容・断絶しつつ存在していることが明らかにされた。
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