研究課題/領域番号 |
20530559
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
田澤 薫 聖学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (70296200)
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キーワード | 児童福祉 / 児童福祉法 / 措置制度 / 保育制度 / 幼保一元化 / 児童保護史 |
研究概要 |
研究の具体的内容: 日本の児童福祉に関する法制度は、今日なお揺れ動いている領域の一つである。今後の児童福祉法制の方向性を見極めるには、児童福祉法制定の1947年に立ち返り理念と実際の検討を行う必要がある。本研究では、児童福祉法制定によって新規にもたらされた戦後の児童福祉行政の根本ともいえる措置制度に着目する。措置制度の導入によって、それ以前の児童保護の実践現場から継承され得た事柄と断続を余儀なくされた事柄のそれぞれを実践に沿いながら整理・分析することで、今日の児童福祉制度-とりわけ保育所制度の-特性の検証を目的としている。 研究の意義: 本研究の作業領域は、見童福祉に関する思想的・制度的研究の一部を担うとともに、混迷する今後の児童福祉のあり方を模索するに有益な示唆を与えるものである。 今年度は前年度からの継続的・補遺的な資料調査を行いながら、とくに保育制度に着目して措置制度の成立が実際として意味したところを、前の時代からの継承・変容・断絶の各視点から検討した。その際、保育費用の問題から、救護法下での施設運営との比較、措置制度から選択利用制度ひいては「子ども・子育て新システム」で計画されている方法との比較を行い、措置制度と表裏一体の関係にある児童福祉施設最低基準の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保育所の措置費に関する行政資料を得て、制度の当初から措置費用の問題がもっとも市民レベルで注目されていた保育所制度に着目したことで、措置制度の成立期における、前の時代の実体としての児童保護からの継承する実践現場の混乱を「措置によらない保育所利用児童」に見出だし、その分析から措置制度の検証を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題研究の最終年度にあたる2012年度は資料調査を継続しながら、これまでに得た知見を分析・考察する作業に取り組む。その際、本課題研究を通して使用してきた以下の5つの作業領域に分けて検討の作業を進め、そのうえで1947年の措置制度の確立前後から今日の問題を照射するという本課題研究の所期の目的に即して総括的な措置制度の検討を行う。 研究作業:1.措置制度の成立に際する議論を国会等の審議録、関係者の論文や発言記録等から整理する。 2,経費の支弁について検討する。具体的には、救護法下での施設運営との比較、措置制度から選択利用制度へ、ひいては「子ども・子育て新システム」で計画されている方法との比較を行う。3.利用児童の確保について整理する。4.職員の資格と資質について考える。その際に措置制度と表裏一体の関係にある児童福祉施設最低基準の検討も行う。5.施設設備の整備を児童福祉最低基準との関連で検討する。 施設等の第一次資料や公文書、聞取り調査等から得た検討素材について、第2次大戦以前の児童保護の時代からの継承・変容・断絶の実際を明らかにし、措置制度がもたらしたものを検証する。
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