・研究1:自尊心が幸福感に与える影響(3)-代表サンプルを用砧た検討「情報化社会に関する全国調査(2004)」(研究代表者:直井優)のデータ(全国の日本人成人対象)を2次分析することを通じて、同一国内の関係流動性の異なる地域間で、自尊心と幸福感の相関が異なるかどうかを検討した。その結果、予測通り、関係流動性の高い地域(日本全国を7地域に分割)では、低い地域と比べ、自尊心と幸福感の関連がより強かった。 ・研究2:自尊心の対人関係拡張機能(2)-実験的検討実験的手法によって自尊心の関係拡張機能を検討した。参加者の自尊心を人為的に操作し、対人関係拡張に対する関心度と行動意図(以下「拡張傾向」)が変化するかどうかを検討した。その結果、予測した実験操作の効果は見られなかった。しかし、前年度にも見られた自尊心と拡張傾向の相関(個人差としての)が再現された。 ・研究3:高自尊心の帰結としての対人関係選択肢(1)日米大学生を対象に質問紙調査を行い、自尊心と対人関係における選択肢の多さの関連を調べた。すると、全体として、関係流動性の高い環境に住んでいる人ほど、自尊心と対人関係選択肢の関連が強かった。このことは、社会生態学的環境構造の違いにより、自尊心が対人関係に対してもたらす帰結が異なることを示唆している。 以上のように、自尊心が高関係流動性状況において対人関係拡張を後押しする適応デバイスとして機能しているとの理論仮説を支持する知見がさらに集まった。来年度は、自尊心が精神的健康に与える影響に対して、社会生態学的環境構造が与える調整効果を検討していく。
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