研究概要 |
平成22年度は,インターネット上において規範やルールを導入し,脱抑制的行動に抑制をかけるための方法として,"コミュニティの管理者による管理行動・規範提示"に着目した。オンラインコミュニティの管理経験のある者を対象に,2度にわたるクローズ型ウェブ調査を実施し,第一に,オンラインコミュニティ上では,どのような管理が行われ,どのような規範が形成・提示されているのかについて検討した。そして第二に,オンラインコミュニティにおける管理行動や規範の提示が,コミュニティの雰囲気・生産性にどのような影響を及ぼしているのかについて分析した。 その結果,オンラインコミュニティにおける管理行動は,"コミュニケーションの調整・介入","新規参加者への配慮","トラブルへの対処","メンバーの削除・整理"という4側面から捉えられることを明らかにした。またオンラインコミュニティにおける規範については,"他者の尊重","投稿時の配慮","攻撃・逸脱行動の禁止","不適切な表現・交流の禁止","過剰な反応・議論の禁止"の5側面から捉えられることが示された。 さらに,コミュニティ上で,各利用者からの攻撃的言動の発生により,コミュニティの話題の硬直・停滞がもたらされることが示唆された。同時に,攻撃的言動の発生はコミュニティの雰囲気の悪化にもつながり,さらに雰囲気の悪化を媒介して,話題の硬直・停滞の促進や,情報の交流・集積の抑制に結びつくことも示された。 しかし,攻撃的言動の発生は,コミュニティの管理行動・規範の提示を促進していることも明らかとなった。さらに,そのようにして促された管理行動・規範の提示は,コミュニティの雰囲気の改善にもつながり,最終的に話題の硬直・停滞を抑制し,情報の交流・集積の促進をもたらすことも示唆された。
|