研究概要 |
本研究の目的は、これまでの日本の異文化間の教育場面で生じた葛藤と解決方略行動、教育価値観の研究成果(加賀美, 2006;加賀美2007)をさらに、国際比較調査研究および世代間比較研究に発展させ、一般的な価値研究の中に関連づけながら包括的な教育価値観研究に体系づけていくことである。これまでの筆者らの研究では、アジア諸国(韓国、台湾など)に居住する小学生、中学生、高校生、大学生の日本イメージの形成過程を検討した(加賀美・守谷ほか, 2008)結果、韓国においては中学生の時期に否定的イメージの形成が認められそれが定着する傾向が見られ、その時期が重要されることが認められた。教育価値観に関しても学生たちがいつどのような教育価値観が形成されているのか発達段階を加味し検討する必要性がある。今年度は、特にマレーシアの学生を対象に、専門家のインタビューを通して質的に検討した。その結果、マレーシアにおいても中学生の時期から受動的態度が認められ、マレー優遇の社会的政策の影響が示唆された。質問紙調査では、31項目から成る短縮版教育価値観尺度(加賀美、2006)を用いて、7カ国の大学生の国際比較調査のデータ収集と分析を行った。教育価値観の理想的教師観(専門性、熱意、学生尊重、教師主導)、理想的学生観(学習意欲、規則遵守、従順)、理想的教育観(文化的視野、人材教育、社会化、創造性、自主独立)の別に12価値次元の分散分析を行い、平均値を測定し多重比較を行なったところ、教師の専門性を最も重視したのは日本人学生で、学生の従順を最も重視しなかった。一方、マレーシアの学生は学生の従順を最も重視したことが認められた。
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