研究概要 |
本研究の目的は、これまでの教育価値観の研究成果(加賀美,2006;加賀美2007)をさらに、国際比較調査研究および世代間比較研究に発展させ、一般的な価値研究の中に関連づけながら包括的な教育価値観研究に体系づけていくことである。今年度はSchwartz(1992)の価値観研究をもとに、中国、韓国、台湾、マレーシア、タイ、アメリカ、日本の7カ国の大学生を対象に、質問紙調査を行い、7カ国の大学生がどのような一般的価値観を有するか、その異同を比較検討することを目的とした。質問票はSchwartz(1992)の個人レベル価値尺度の56項目、9件法を用いた。日本語による質問票を作成した後、6カ国の翻訳版を作成し、バックトランスレーションによって翻訳の妥当性を確認した。台湾3校、韓国4校、マレーシア1校、中国1校、日本5校、タイ2校、アメリカ2校の7カ国18校の大学生を対象に質問紙を配布し回収した結果、有効回答数は、台湾245名、韓国251名、マレーシア199名、中国207名、日本259名、タイ174名、アメリカ106名の合計1441名(男性641名、女性800名)となった。分析方法は、価値尺度の56項目を個人別に標準化した。10個の価値タイプ(勢力、達成、快楽主義、刺激、自己志向、普遍主義、思いやり、伝統、同調、安全)を構成する項目の平均値を算出し、それを下位尺度得点とした。一元配置分散分析を行いBonferroni法による多重比較を行った結果、いずれの価値タイプにおいても7カ国間で有意差が認められた。7カ国の学生の平均値の中で、最も高い得点に着目すると、韓国学生は、「勢力」、「達成」、「同調」が、台湾学生は「刺激」が最も高い傾向が見られた。日本学生は、「快楽主義」が最も高く、アメリカ学生は「自己志向」、「普遍主義」が最も高い傾向が見られた。タイ学生は「思いやり」、「伝統」が最も高く、マレーシア学生は「安全」が最も高い傾向が見られた。中国学生は突出した価値タイプの内容は示されず、中間的傾向を示した。
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