研究概要 |
本研究は日本においてどのような教育価値観(加賀美,2007)がいつ形成されるか、発達段階によって多様な世代の人々の価値観を比較し検討することを目的とする。特に、Schwartz(1992)の10価値タイプと教育価値観の4つの包括的価値観の関連については、理論的仮説を検討した研究はあるものの(加賀美,2006)、実証的には検討していないため、本研究ではその関連を検討しつつ世代間比較を検討した。方法については、短縮版教育価値観尺度伽賀美,2007)31項目、およびSchwartz(1992)の個人レベルの価値尺度56項目を採用した。インターネットリサーチモニターに対するWeb調査で配布、回収を行った。対象者は、14歳・17歳・20歳(いずれも学生)は各100部、25-29歳・30代・40代・50代・60代は、各150部とした。4つの包括的教育価値観である、自己実現的価値(教師の専門性、熱意、学生の自主独立、学習意欲)、伝統(権威)主義的価値(教師の教師主導、学生の従順と規則遵守)、自由主義的価値(学生尊重、創造性)、社会貢献的価値(人材育成、文化的視野、社会化)の平均値を算出し得点とした。これらを年代・世代ごとに対象者群間で比較するために、一元配置分散分析を行い、Bonferroni法による多重比較を行った。その結果、自己実現的価値観、社会貢献的価値観、伝統権威主義的価値観については、概して年齢に沿って平均値が高くなるというほぼ類似した傾向が見られた。一方、自由主義的価値観は年齢に沿って平均値が低くなるという傾向が見られた。さらに、年代毎に有意差があったSchwartzの5価値タイプは、25歳-29歳を境に2分化傾向がみられたことからライフイベントと関連付けられる。さらに、相関分析では、教育価値観とSchwartzの価値観は低~中程度の正の相関が認められた。
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