本年度は、対人コミュニケーション・スタイルが相手や状況によって、いかに異なるのかを、社会的関係性モデリング(SRM)を用いて検討した。人びとのコミュニケーション・スタイルはどの程度個人の特性的なものであるのか、それとも相手によって促されるものなのか、それとも特定の関係性に限定されるのかについて検討した。当初は比較文化的な検討を予定していたが、研究実施困難のことから、国内でのデータ収集に限定した。6人一組としたグループ単位で、6グループによるデータ収集を実現できたが、各グループメンバーは、お互いのコミュニケーション行動を評定し、ラウンドロビン・デザインによる分析を実施した。その結果、予想していたように、コミュニケーション・スキルは個人の特性であるよりも、相手によってそのレベルが異なることが明らかにされた。つまり、「関係性効果」の重要性が示された。 その他に、対人葛藤状況における潜在的・顕在的方略の選好に対する関係性の要因の影響(親密性および地位格差)について、対人コンピテンスの観点から調べた。また、本研究に関するシンポジウムを企画・運営し、国際コミュニケーション学会(International Communication Association)東京大会では「アジアのコミュニケーション」について、全米コミュニケーション学会(National Communication Association)においては「トヨタ自動車のリコール問題における直接性・間接性のコミュニケーションの問題」についてのシンポジウムを実施した。
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