異文化間ソーシャルスキル学習という、心理教育的セッションを実施するここにより、異文化間の対人関係形成が促進される効果を、介入実験によって確認し、異文化間ソーシャルスキル学習が社会文化的適応を促進するとの仮説を、検証することをねらいとする。まず、異文化間ソーシャルスキル学習の学習枠組みを整備するため、「AUC-GS学習モデル」の検証を進めた。次に、異文化滞在者である在日留学生を対象に、異文化圏での対人関係に必要となる、社会的技能(ソーシャルスキル)を学習する実験的セッションを行った。さらに、学習後の般化を調べるために、セッション経験者の追跡調査を実施した。AUC-GS学習モデルは、申請者が提唱するモデルで、自然学習と人為学習の結果生じた文化学習をどの程度説明できるか、またそれはどこまで妥当なものなのかを探った。異文化間ソーシャルスキル学習は、理論的には、AUC-GS学習モデルのCSセルに、主に該当するとみられる。他セルに属する文化学習の複数の手法(文化アシミレーター等)と共に、学習の心理的効果を測定し、対比的に評価した。ソーシャルスキル学習においては、CSセルの効果が強く現れたが、他の効果成分も付随していた。他の学習手法でも、複数セルに及ぶ副次効果の認められるものがあった。全体としては、パッケージ実施による複合効果の存在が確認され、パッケージの学習形態としての利点が指摘される。最後に、医療的背景から行われるソーシャルスキルの教育との理諭的な差異化を検討した。臨床心理のソーシャルスキル「訓練」は、医療モデルに基づく、規範的な行動修正であり、「治療」訓練の体系である。ソーシャルスキル「学習」は、教育モデルに基づき、行動オプションの獲得を目指すもので、「能力開発」のために構成される。本研究は異文化滞在者の新たな適応援助策の創出をねらった、応用社会心理学的研究として、展開が進められている。
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