昨年度の研究1(調査研究:悪質商法と詐欺に対する大学生の遭遇経験と被害経験)に引き続き、研究3として、悪質商法と詐欺に対する大学生の警告接触経験を調査研究によって検討した。研究3では、キャッチセールス(悪質商法)と架空請求(詐欺)に焦点を絞り、調査したところ、(1)それらに対する遭遇経験者のうちの約40%が警告に接触した経験を持つこと、(2)商品購入や支払いを判断する際に、警告を考慮した程度が高いこと、(3)警告が被害を防ぐのに役立ったと感じている程度が高いことが判明し、虚偽説得に対する防御技法としての警告の有効性が実証された。 また、昨年度の研究2(実験研究:チラシ広告による虚偽説得(悪質商法)に及ぼす事前警告のタイプの効果)に引き続き、研究4として、通知文書による虚偽説得(詐欺)に及ぼす事前警告のタイプの効果を実験的に検討した。研究4では、虚偽説得に対する事前警告の有意な説得抑制効果を発見できなかった。しかし、(1)振込行動意思が説得効果の指標として最適であること、(2)事前警告のタイプによって異なる媒介メカニズムが働き、説得への抵抗が生じる可能性があることが示唆された。特に、(a)説得メッセージの話題と立場の事前警告は、否定的思考の増加を媒介して、(b)説得者の説得意図の事前警告は、送り手評価の低下を媒介して、(c)説得者の虚偽意図は、肯定的思考の減少を媒介して、振込行動意思を抑制することが判明した。 さらに、次年度の研究を前倒しした研究5(実験研究:虚偽説得に及ぼす虚偽説得者の意図に関する事前警告の効果)では、ハガキによる架空請求(詐欺)を実験材料に用いて、説得者の説得意図(PI)、虚偽意図(DI)、情緒喚起意図(EI)の3種類の事前警告を単一タイプとして取り上げるだけでなく、これらを組み合わせた結合タイプ4種類も同時に取り上げた。その結果、DI単一タイプの事前警告とPI・DI結合タイプの事前警告が、不安・動揺およびメッセージ評価を媒介して、虚偽説得効果を抑制することが実証された。
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