本研究の目的は、自動車運転中の「不安全行動」について、行動分析学の視点から環境(状況)と行動との相互作用に注目することで新たな定義を確立し、さらに、産業心理学、知覚心理学、交通心理学の視点を加え、その発生機序を明らかにすることによって不安全行動を減少させるための心理学的、工学的対策を提案・検証することである。本年度は以下のような研究を実施した。 1.「不安全行動」に関する面接調査:普通免許を保有する男女(19歳〜47歳)8名を対象に、日常の運転に於いて「不安全と自覚している運転習慣」「ヒヤリハット体験」などについて、状況との関係を重視した聞き取りを実施した。その結果、運転習慣としては、「黄色信号ではほぼ無条件に交差点へ進入する。」「制限速度に関わらず自分で安全と思う速度で走行する」などミッコネンらの運転行動の階層モデルにおける階層1、2に属する事例が得られた。ヒヤリハット体験からは、「周りの車が動いたのに自車が動いたと思い思わずブレーキを踏んだ。」「直進中、普段右折することが多い交差点でつい右ウィンカーを点けてしまった。」など、意図的、意識的ではなく、上記階層モデルでは階層3、4に属すると思われる行動の影響が強く示唆された。 2.シミュレータ実験:上記で明らかになった、「無意図的、無意識的行動」「(状況に不適合の)咄嗟の運転行動」の特徴を調べるために、自動車シミュレータによる実験を実施した。実験的にこれらの行動を生起させる方法を確立した。このような「(自分でも予測外の)行動」が、予測していた運転状況に影響することで結果的に「不安全行動」に繋がるという可能性を検討した。 3.実車実験:実際の運転場面でのデータを収集するための実験車および、測定システムの整備を実施した。
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