本研究の目的は、自動車運転中の「不安全行動」について、実証データを基に、その発生機序を解明し、「不安全行動」を減少させるための心理学的、工学的対策を提案・検証することにある。平成21年度は大きく2点について検討を進めた。 (1)シミュレータ実験:20年度に実施したシミュレータ実験により明らかになった、パニック的行動(レスポンデント行動化したオペラント行動に端を発する不安全行動)を検証し、パニック的行動を防ぐための対策について考察した。運転者の短期的・長期的予測と不一致な運転状況が発生することにより、意図しない行動(ウィンカ操作、クラクション動作など)が反射的に生起し、所謂パニック的行動へ導かれる可能性が高いことが判明した。これらの「不安全行動」生起の背景要因としては、運転習慣の影響が強いことが推察された。成果の一部は外部研究会(ヒューマンファクター研究会、大阪)で発表した。 (2)実車走行実験:シミュレータ実験で観察されたパニック的不安全行動が、実車運転でも発生しているかを検証し、実走行場面における影響要因を考察するために、実車走行実験を実施した。定性的な観察では、シミュレータ実験と同様の咄嗟の(反射的行動)が実走行場面でも多数生起していると考えられた。 実車運転行動について、より客観的に分析するために、行動分析学の視点から環境(状況)と行動との相互作用に注目し、運転行動の随伴性ダイアグラムを作成し、「不安全行動」の発生機序のモデルの確定を進めている。
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