本研究の目的は、自動車運転中の「不安全行動」について、行動分析学の視点から環境(状況)と行動との相互作用に注目することで新たな定義を確立し、さらに、産業心理学、知覚心理学、交通心理学の視点を加え、その発生機序を明らかにすることにより不安全行動を減少させるための心理学的、工学的対策を提案し、検証することにある。 2010年度は、(1)公道実車走行実験によって、運転状況と運転行動に関するデータをドライブレコーダーによって集積し、随伴性ダイアグラムを応用した「不安全行動」の分析を実施した。「不安全行動」の1例として、黄色信号での交差点進入行動に注目し、黄色信号で停止した場合、黄色信号で進入した場合について、運転者の行動と交通状況を元に、随伴性ダイヤグラムを作成して比較した。黄色信号の認識タイミング、交通流、後続車の挙動、運転者の急ぎ、などが黄色信号における交差点進入行動に影響していることが明らかとなった。 「不安全行動」のもう一つの例として、「短い車間距離をとる行動」を取り上げて、同様の随伴性ダイヤグラムによる分析を行い、前後の交通流、先の信号の変化、運転者の急ぎ、などが影響している可能性を検討した。 合わせて、昼間と夜間における、運転速度、ブレーキタイミングの差などの環境要因による、運転行動の差異が明らかになった。 シミュレータにおいては、上記の実走行分析の結果をふまえた、運転状況・運転シナリオを構築し、車間距離維持と、運転パフォーマンスの関係を検討した。
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