研究概要 |
本研究の大きな目的は「幼児期初期から幼児期後期にかけての言語表現こ基づく他者理解」に関する発達的仮説を実験と観察年基づいて見出すことである。今年度はこれに基づき、以下の実験および観察の分析を行った。1.幼児における物語の登場人物の内的状態への言及に関する実験的検討。第一に、今後の発達的検討への示唆を得るために、絵図版を手がかりとした幼児(3〜6歳児)の物語再生内容に基づき、物語の登場人物の内的状態のうち特に「感情」についての言及に焦点をあて再検討を行った。(日本発達心理学会第20回大会にて発表済み)。今後は、これまでに得られた結果とも合わせ、こうした内的状態の言及が学童期にかけてどのように変化していくのかという観点も含めて、幼児期全体にわたる発達仮説を提示していく必要があり、学童期初期の子どもに対して実験を行いそのデーグも加えて発達プロセスの検討を行う予定である。 第二に、ファンタジー的な内容をもつ既存の絵本を用いたお話づくりに関する実験を4,5歳児を対象として行った。今後、登場人物の内的状態への言及に関する分析を行っていく。2.他者理解を支えるものとしての家族の会話に関する縦断的検討(縦断的観察研究)ある5歳男児(Y)の就学期にかけての母と学童期の兄姉との夕食場面の会話での家族間コミュニケーションを採りあげ、幼児の他者理解にとり重要と考えられる、母や兄姉とのやりとりの詳細な事例的検討を行った(学会誌「発達心理学研究」に原著論文として採択済み(印刷中2009年9月掲載予定)。今後、さらに未分析の同対象家族の縦断的観察データおよびそれとは異なる家族(0歳から小学校入学までの時期の子どもとその兄と母)の未分析の縦断的観察データを通じて、幼児期初期から幼埠期後期(学童期初期も含む)にかけての「他者理解を支えるものとしての家族の会話」についてさらに検討を行っていく予定である。
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