本研究の大きな目的は「幼児期初期から幼児期後期にかけての他者理解」について言語行動および社会的文脈における言語的コミュニケーションに着目しながらその発達的仮説を実験と観察に基づいて見出すことである。今年度は、以下の実験・観察および分析を行った。 1.実験(物語再生・作話)の施行と分析:物語の登場人物の内的状態への言及について調べるための物語再生実験を、幼児を対象とした結果との比較を行うために、2009年6月に千葉市内の小学校低学年児(2年生)を対象に行った。現在、幼児期から学童期初期にかけての変化も視野にいれながら、幼児期全体にわたる発達プロセスについて分析を行っている。また、年長児(5、6歳児)を対象として行った既存の絵本を用いたお話づくりに関する実験結果を日本発達心理学会で発表し、また、大学の研究紀要に報告した。 2.観察の施行と分析:社会的文脈においてどのような他者理解に関わるコミュニケーションが行われているかを検討するために、保育場面について、2009年11月に、保育園児(1~3歳)の横断的観察を行い、現在分析を行っている。また、同様に、3~6歳の子どもについても検討するために、現在まで幼稚園での縦断的観察を行っている。さらに、家庭場面については、5歳児とその家族の家庭場面の縦断研究が2009年9月に「発達心理学研究」に掲載された。現在、きらに同家族および別の家族の未分析の縦断的観察データを分析中である。 3.上記を総合し、また、学童期初期への連続性も視野にいれながら、幼児期初期から、幼児期後期にかけての社会的文脈における他者理解の発達プロセスについて総合的な検討を行っていく予定である。
|