本研究の目的は、小学生用のビッグファイブ対応の質問紙を作成し、標準化することである。まず、教育心理コース専攻生5名が既存の質問紙を再検討し、各質問項目のビッグファイブ性格次元への対応を確認し、内容的に対応していない項目を作成の上、追加し、暫定版の性格検査用紙を作成した。その後、現職教員1名が質問項目を読み、小学生4〜6年生に難しいと思われる表現等の手直しを行った。マークシートへの印刷の関係で、暫定版質問紙の質問項目は53に限った。また、印刷面積の関係で、難しい漢字はひらがなに直した。専用のA4マークシートと読み取りプログラムを作成した。暫定版質問紙は各学級担任が都合のよい時間帯に実施した。参加者は小学生4〜6年生228名で、A4マークシートに印刷された53項目の暫定版質問紙に「はい」と「いいえ」で回答した。また、担任教員は、各児童の性格をゴウルドバーグのチェックリストで評価した。担任教員が評価したGoldbergのチェックリストは、各次元の合計得点を算出し、児童が自己評価した各質問項目と相関を調べた。担任教員の評定と有意な相関は、外向性項目に多かったが、全体としては少なかった。まず、全53項目で主因子法による因子抽出を行うと、固有値の減少傾向から5因子と確認された。そこで、因子パーシモニー法による直交回転を行った。担任の評定と有意でない項目は因子負荷量も小さかった。そこで、外向性項目で、有意でない2項目を削除して、因子分析をやり直した。続いて、良識性を8項目、情緒安定性と協調性と知的好奇心を9項目にして、因子分析をやり直した。その後、試行錯誤的に1項目を削除して、因子分析を繰り返し行った。7回目の因子分析で、綺麗な単純構造が得られたので、これを最終結果とした。ビッグファイブの各次元を各8項目で構成し、α係数を求めると、それぞれ0.706、0.806、0.783、0.680、0.732となった。担任教員の評定と児童の自己評定の相関は外向性のみに0.227が見られただけであった。今後は、問題攻撃性尺度や頻度尺度を追加し、郵送法による全国標準化を行う予定である。
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