研究概要 |
本研究の目的は,教師に期待される「児童を引き上げる指導性」と「児童を受け入れる指導性」という,矛盾・対立した二つの指導性機能を教師が無理なく同時に実践できる新たな指導方略を提起して,教師の学級経営力向上に活用できる理論的・実践的研究をおこなうことにある。 平成21年度は,まず,平成20年度の予備調査のデータについて,一人の教師がどの指導行動をともにおこなっているかの指導パターンをみるためにクラスター分析を実施した。その結果,二つの指導性機能に対応する指導行動をともに実施する指導パターンが1つ抽出された。 次に,本調査の実施である。予備調査で使用した指導行動カテゴリー尺度を修正した項目(全47項目)と,児童の課題意欲・学級連帯性・課題成果を評価する項目(全18項目)によって構成された質問紙を小学校教諭145名に実施,また小学4~6年(34学級)児童に本人の課題意欲と学級連帯性に関する質問紙(全10項目)を実施した。カテゴリー尺度の信頼性確認後,二つの指導性機能の関連を検討するため,指導行動カテゴリー間の相関,及び児童の諸側面の変数との相関から分析している(平成22年度も継続中)。 加えて,教師の二つの指導性機能の統合化に関する仮説を学級コンサルテーションの試みから検討した。小学低学年・中学年で学級経営が難しいとされる学級の担任教諭に対し,2つの指導性機能に対応する指導行動カテゴリーがいつ・どのように実施されているか(されていないか)を学級でのフィールドワークをもとに分析し,その結果を担任教諭にフィードバックして,学級経営や児童とのコミュニケーションについて担任教諭に省察を促すかたちのコンサルテーションを実施,その成果を担任教諭の児童理解の質的変容から検討した。
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