研究概要 |
平成22年度は,大阪府内A中学校の145名(4学級)を対象に50分の介入プログラムを開発・実施した。このプログラムは,1)落ち込みをストレス反応の一つとして説明した。そして落ち込みは誰にでも起こりうることを説明した。次に,2)日本イーライリリーにより作成された教材用の映像を上映した。これは,中学生の主人公A君が進路のことで悩み,更に文化祭の責任者に選出され,友人からのサポートがない中,落ち込んでいくという内容であった。3)同じく,日本イーライリリーにより作成されたストレス対処法を上映し,ストレス反応に対する対処法の一つとして他者に援助を求めることの必要性を強調した。そして,4)グループワークを実施した。このグループワークは,自らのストレス対処及びソーシャルサポートネットワークについて考え,相談できる人のリストを作成するものであった。最後に,5)養護教諭とスクールカウンセラーに登壇してもらい,保健室並びに相談室が提供している援助内容について解説してもらった。参加者は,介入の6日前にプレ調査として,落ち込みに対する否定的認識スクールカウンセラーに対する被援助志向性尺度に回答した。そして,介入の7日後にポスト調査として同様の尺度に回答した。効果測定を行ったところ,落ち込みに対する否定的認識尺度においては,落ち込みを忍耐不足と考える傾向である「忍耐不足」,落ち込みを努力不足と考える傾向である「努力不足」は有意に低下した。これは介入プログラムによりメンタルヘルスリテラシーが高まったと考えられる。更に,被援助志向性の「援助に対する懸念・抵抗感」も有意に低下した。この結果は,介入プログラムにより生徒のスクールカウンセラーに対する援助の懸念・抵抗感が低下した可能性を示唆するものである。
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