研究概要 |
平成23年度は50分の介入プログラムを中学生,153名(4学級)に対して実施した。このプログラムでは,まず(1)落ち込むことをストレス反応の一つとして捉えた。次に,(2)中学生の事例を映像で見た後,自らの落ち込みの体験を振り返ってもらった。そして(3)ストレス対処について学び,ストレス対処の一方略として,他者に対する援助要請行動を紹介し,生徒自身のサポートネットワークを想起してもらった。最後に,(4)養護教諭スクールカウンセラーから提供できる援助サービスの情報提供を行った。介入の効果は,被援助志向性尺度で検討した。被援助志向性尺度の下位尺度得点の平均値(標準偏差)は,〈援助の肯定的側面〉の介入前が17.868(3.778),介入後が18.507(3.976)であった。〈援助に対する懸念・抵抗感〉は介入前が13.844(3.127),介入後が12.504(3.731)であった。〈援助の肯定的側面〉得点については,介入前より介入後の得点が有意に上昇した(t=-2.482,P<.05)。〈援助に対する懸念・抵抗感〉得点については,介入前より介入後の得点が有意に減少した(t=4.492,p<.01)。スクールカウンセラーの認知は,介入前は「カウンセラーが配置されているのを知っている」と答えた人が92名(59.4%)であったのに対して,介入後は143名(92.3%)が「知っている」と回答していた。落ち込みに対する否定的認識尺度の下位尺度得点の平均値(標準偏差)は,〈対処不足〉の介入前が21.801(4.209),介入後が20.000(3.668)であった。〈落ち込みの受容〉は介入前が12.928(2.423),介入後が13.046(2.284)であった。〈努力不足〉は,介入前が8.889(1.786),介入後が8.497(1.717)であった。介入前より介入後の得点が減少したのはく対処不足〉(t=5.408.P<.01)と〈努力不足〉(t=2.491,P<.05)であった。以上のことから,本研究の介入プログラムは中学生のスクールカウンセラーに対する被援助志向性を高め,落ち込みの否定的認識を低減することが明らかになった.
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