研究概要 |
研究計画実施の第1として、吉丸・山田(印刷中)では、基本英語子母音について音響分析をおこなった。日本式英語では、英語母音空間が相対的に縮小すること、歯擦音と破擦音の音圧が低く、スペクトルパターンが異なることを明らかにした。第2として、Tomita, Yamada, and Takatsuka(in press)において、英語母語話者と日本人を対象に、英語短音節語からなる名詞句の基本母音/i, u, a/のF1とF2を測定し、日本人の基本母音からなる母音空間が英語母語話者の場合よりも小さくなるが、chickenなどのschwaがはる母音空間は逆に大きくなることを実証した。これは、日本人のschwaが曖昧母音化していないこと、すなわち舌の中央化がなされていないことに呼応する。第3に、Yamada(2009)では、日本人学生と英語モデル話者の英文音続における主要母音のF1とF2の比較をおこない、英語母語話者からどのくらい離れているかを示す指標づくりをめざした。基本的には、連続する2母音核を位置ベクトルとして、その長さと角度について母語話者と学習者を比較する指標を提案した。今後はそれが知覚をどのくらい反映するかがひとつの問題になる。第4に、堀口・山田(印刷中)では、まずWells(2006)の日本人が英会話などにおける発話文の"I don't think…"で、notに高いピッチの不自然なアクセントを置くという指摘を、日本人学生を対象に検証した。その結果、英語モデル話者も複雑なピッチパタンを呈するが、日本人学生の場合、単調な平板型の特徴があるが、否定辞notに高いピッチが認められた。さらに、否定辞後にポーズを置く傾向が新たな特徴として観察された。これは、日本語否定辞「ない」の後のポーズが転移した可能性を示唆し、今後の研究課題のひとつとなった。
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